買った本:脳の中の幽霊

脳のなかの幽霊 (角川21世紀叢書)

脳のなかの幽霊 (角川21世紀叢書)

これも前々から気になっていたので購入。

これを読んでふと思い出したのが、ふわふわの泉 (ファミ通文庫)という小説の一場面。
自分自身を情報化し、宇宙を旅している宇宙人に対して、地球人が自分もそのような姿になり、宇宙へ行きたい、と言うと宇宙人は、

「それは無理でしょう」
「なに?」
「私もかつては有機体でしたが、同じ有機体でもみなさんとは全く異なるものです。みなさんの自意識には中枢がありません。人間の自意識は、自己と周囲の環境との関わりを類推することで生まれる、一種の錯覚です」
「わしらの魂は錯覚なのか」
「はい」
「そうは思えんぞ」
「錯覚の中でそれを自覚することは不可能です」
「・・・・・・」
「そんなわけですから、みなさんの意識を情報化し、マイクロチップに移植したり、データとして転送することは不可能なんです。しょせん錯覚ですから」

この「脳の中の幽霊」という本を読んでいて強く感じたことは、実際に意識の情報化が不可能かどうかは置いておくとして、僕らの意識というものは非常にあやふやで、まさしく、錯覚なのではないか、ということ(例えば、腕を隠し、他人にその隠した腕と別に用意した腕状のものを同じタイミングで叩くと、その腕状のものが隠した腕であるように感じてしまう、などと容易に変化してしまう身体イメージや、自分の一貫性を保つための記憶の改竄、等)と、その錯覚を利用した認識、推論の力の驚異(現在のコンピュータと比較すると鬼のような空間の把握能力や人の顔の認識能力、直感や意思決定)、そしてそれらの錯覚の仕組みを解き明かすことによって機械にも人のような能力を付加することができるのではないか、といった期待(まあ、これ自体が錯覚の可能性大)。
要するに、非常に面白かった。
2段組でびっちり詰まっており、内容も様々な症例を元に書いてあるため、わかりやすく、ボリューム感満点。続刊も出ているようなので、近いうちに買おうと思った。