買った本:考える脳 考えるコンピュータ

endo_55012005-12-18

考える脳 考えるコンピューター

考える脳 考えるコンピューター

先日言っていた本。
この本はかなり面白い。人工知能好きは読め。なんか、これからごちゃごちゃ難しいこと書くように思えるけど、それは僕の理解が不十分、かつ説明のための例が不足しているためで、本書は非常にわかりやすい。
この本の内容はこんな感じ

  1. 脳の新皮質の構造は実際に解剖してみるとどこも同じ
  2. つまり、新皮質の機能(画像・音声認識、文章の組み立て、身体の動作の制御、意思決定など)は全て同じアルゴリズムで処理されている、と考えることが出来る。*1
  3. そのアルゴリズムは以下の原則で動作する
    1. 新皮質は1枚の大きな生体組織で出来ており、複数の機能領域へとわかれている。
    2. そして、その領域同士は階層として接続され積み上げられ、信号の受け渡しを行っている。
    3. 領域内部で行われている内容は次(具体的な領域内部の振る舞いは省略)
      1. 下位領域から送られてきた信号を受け取り、現在、その信号がどのパターンに属しているかを決定する。(本書での例えを使うならば、色紙が手渡され、それを何色かを判断する)
      2. そして、そのパターンが、既存のシーケンス(パターンが現れる順序)に属していないかどうかを判定し、属していれば、そのシーケンスの名前を上位階層へ渡す。(赤緑紫黄青白、といった順番で色紙が渡されることが多く、現在の色紙がその順番の途中であるとわかったならば、上位階層に、今は『赤緑紫黄青』の途中である、と伝える)
      3. この情報の流れは上方向だけではなく、下方向にも存在する。ある領域内で、渡された信号がどのパターンに属するか判断に迷う時、そして、その上位領域では、他の領域からの信号から現在のシーケンスのシーケンスを予測出来ている時、その領域に所属するべきシーケンスを伝え、送られてきたパターンを決定することが出来る。(領域Aと、その上位に領域Bというものがあるとする。Aは赤緑紫まで色紙を受け取っており、次に受け取った色紙の色黄色か橙かで非常に微妙で赤緑紫「黄」青白のシーケンスか、赤緑紫「橙」青白か判断がつかない。その時、上のBにとってはAが属しているシーケンスが赤緑紫黄青白であるとわかっているならば、「君、それは黄だ」と伝える)
      4. 逆に、現在のシーケンスから、次に送られてくるパターンを予測し、下位の領域に次にどんなパターンが欲しいかを伝えることが出来る。
      5. 予定外のパターンが発生した時は、そのことを上の階層に伝え、上の階層はさらに広い視点から見た場合のシーケンスを探す。
    4. この領域が何十、何百と積み重なることで、
      1. 下の階層からの信号(画像データなどの外部からの入力)は、少しずつ内容が抽象化され(予想されていることは全て省略され、特に変わった事象のみが上位の階層へ送られる)、そのシーケンスを予測しようとする。同時に、刻一刻と変化する世界のモデルを各階層内で学習を(新しいシーケンスを見つけると、それに名前をつける)行う。
      2. 上位からのシーケンスの予測は、下位の階層へそのシーケンスを構成するために必要なパターンを呼び出していく。(たとえば、文章を暗唱しようとすると、その文章を構成する句をいうためのシーケンスが呼び出され、その句を構成する単語を言うためのシーケンスが呼び出され、次には音素が、最終的には、その音素を口にするための筋肉の動きのシーケンスが呼び出され、最初に言おうとした文章が発話される)
  4. この仕組みによって、次のことが可能となる
    1. 各種感覚を統合して世界をモデル化し、
    2. その未来を予測する
    3. 予測に従って、自分が操作できる環境を変化させる(身体を動かす)

このモデルを用いると、これまで色々不思議だなあ、と考えていた心の働きに説明をつけることが出来るので、非常に気に入っています。(練習を積むことによって、素人と玄人とではその能力に天と地ほどの差がつくこと、思考が途切れるとそれまで何を考えていたか忘れてしまうこと、絵を書く時、輪郭線を書くこと、無意識な動作ほど自動化されることetc...)

当方、生体などに関しては全くの素人なので、詳しい方、
「ばっか、おまえ、この本の内容を全然理解していない!」とか「○○の説明が抜けているだろう!」「この本の内容は基本から間違ってる」
などがあったら指摘お願いします。

*1:この辺はヴァーノン・マウントキャッスルが言ったことらしい、これ読んでしょんべんちびりそうになった